ボブ・マーリー:ONE LOVE

本作を梅雨の真っ只中、雨のそぼ降る夜に、T-Joy東広島にて体験してきました。

 

言わずと知れたレゲエの神様ボブ・マーリーの伝記映画です。わたしも若き頃の一時期彼の音楽にはまったひとりなのですが、彼は音楽の面だけでなく、思想的にも宗教的にも人間的にもさまざまな面を持つ多角的で大きな存在であり、いまだにひとつの作品などで包括的には表現しがたい人であります。もちろんわたしもその辺の音楽以外の面についてはあまりよく知らない状態で時が過ぎてきました。なのでどんな切り口で彼を表現したのだろうという興味を持って映画館に足を運びました。

 

さて本作の切り口は彼の故郷ジャマイカ・トレンチタウン時代の絶頂期の音楽制作、人生を変えることになった地元でのライブ、その二日前に起こった暗殺未遂事件、余儀なくされた父親の出身地であるイギリスでの亡命生活、そこから生まれたスピリチュアルな名盤「エクソダス」のエピソード、自らのルーツ・アフリカに発するラスタファリアニズムへの傾倒、運命の病を交えながら、あくまで彼自身と家族(妻やその子どもたち)との絆を中心にシンプルに描かれていました。

 

しかしどんな切り口であれ、何と言っても本作は、物語のバックに流れる彼の音楽とグルーブ感が素晴らしく、映像と音楽を通して映画館を包み込むように幸せな空間に変えていました。

 

思い起こせばわたしもまだ若き学生時代、音楽やアングラ文化にのめり込んでいた時期に彼のイギリス公演の実況盤でもある、すでに誉れ高かった名盤「ライブ!!」を手に入れ、とことん聴き込んだ時期がありますが、あの「No Woman, No Cry」のもの哀しげでありながら、独特のグルーブを伴う力強さが溢れた音楽にはただならぬものを感じ、当時熱い生活のなかでBGMのように何回も繰り返し流していたことを思い出し、久々また聴きたいと思いました。 当時は他のものにも興味の方向が多方ありすぎ、彼の音楽の背景にはどんな物語が隠れているのかは深堀りせずに過ぎていましたが、本作によって少しだけ彼の音楽と人生に触れられたような気分になりました。

 

まぁそんな理屈などより「ボヘミアンラプソディー」のときもそうでしたが、アーティストの素晴らしい音楽そのものを直接大音響と大画面を通して五感で触れるということは本当に素晴らしく、梅雨でありながら久々に爽快感あふれる幸せな夜になりました。