変な家

梅雨の気配がする雨の夜に本作をT-Joy東広島にて観てきました。

 

本屋に平積みされている原作「変な家」。ほぼ事前情報はなく不動産ミステリーということはわかるものの、どんな内容かはまったく想像がつかない作品でした。

 

観終わって思ったのは、「家」ということで現代的つまりモダンで科学的な物語を想像していたのですが、大外れでした。実態は懐かしい家や時代の怨念や確執がうごめくおどろおどろしい世界であり、わたしの世代にとっては、中学生のときに角川映画や角川文庫で大流行りした溝口正史ワールドでした。

 

実は少年時代にSFやミステリー大好き少年であったわたしにはこれらの世界に対しては十分に免疫ができており、そう恐れることなくワクワクドキドキで楽しめました。とくにラストシーンの旧家が激しく燃えるのを車窓から眼下にみる場面、どこかデジャブ感があるな~と思ったら、村上春樹さんの小説「羊をめぐる冒険」の主人公が最後に山荘が爆発しそこから煙が上がるのを列車の車窓から見送るという場面でした。もちろん本作は映画化されておらず、わたしのこころのなかでのイメージなのですが、見事にシンクロしました。

 

それにしても本作を観終えてやはり思うのは、社会の理不尽、家を取り巻く因習の強引、それらにかかわる個人の想いがひねくれるとこのような事件が起こらないとは限らないわけで、伝統や歴史を重んじながら個人が悲しまない世の中に少しずつ近づいていければ・・・なーんていうミステリー映画を観た後には似つかわしくない感想を持ちながら帰路に着きました。