暮もいよいよ押し迫った休日の昼に本作をT-Joy東広島にて鑑賞してきました。 日本スポーツ漫画史上5本の傑作に入る原作漫画を基に、原作者井上雄彦さん自身が監督を担った作品であり、かつてテレビアニメ化された本作ですが、ややつなない作画であり、根強いファンからするともっと素晴らしい作品にできるはずなのにという想いを募らせていただけに、今回の井上監督自身による作画、映画化はそういった面での不満を吹き飛ばすどころか、さらなる飛躍が期待できそうであり、かなり期待しての鑑賞になりました。
冒頭の登場人物らが登場するシーンからして、監督自らがペンをとった線であることはほぼ明らかであり、バスケットの試合を本当に観ているかのような錯覚にとらわれるほど描きこまれており、まずは作画に大満足。
さらに物語の内容そのものも,漫画での最終戦となる山王工業戦を縦軸に、宮城リョータの生い立ちとバスケットに懸ける秘めた想いを横軸に、念入りに編み込まれたタペストリーのような作品として原作を基にしながらさらに広く深い新たな世界が表現されており、全編にわたって、「さすが井上雄彦だな~」と嬉しさとともに嘆息が出るほど素晴らしい作品でした。
本作については、巷でも指摘されているように(わたしは同じ漫画やスポーツ好きの親友から指摘を受けました)、スポーツ漫画のもうひとつの名作ドカベン31巻(複数の登場人物の少年時代の逸話をすべて収録したこともあり31巻のみ異様にぶ厚い本となっていました)の影響があるようです。山田、里中らが新2年生の春の甲子園での土佐丸戦での、山田、里中、岩城、殿馬らの明らかにされる過去の逸話が挿入されながら、これまでで最強のライバル犬神と対峙しながら進行していく決勝戦。そして最後に殿馬の秘打「別れ」による勝利。今回のリョータの逸話をはさみながらの物語の進行はまさにドカベン31巻を踏襲するかのようにシンクロしており、まるでドカベンへのオマージュとなっているようです。
どうやら井上雄彦さん自身も「ドカベンを読んだことが漫画家を志すきっかけになった」と語っておられるほどドカベンファンであり、またそのなかでも分厚い31巻に対する思い入れが強いようです。そういえば原作コミック「スラムダンク」の最終巻はなんと31巻でした。
わたしも個人的に「ドカベン」をリアルタイムに読んでスポーツの素晴らしさに目覚めた世代であり、これはうれしい発見でした。また「ドカベン」もアニメ化に関しては線の細い貧弱な作画が残念であったアニメ作品であり、できれば亡き水島新司先生の遺志を継ぎ、どなたかが(井上雄彦先生なら最高です)再度迫力あるアニメ作品としてリメイク(もちろん春の土佐丸戦も良いのですが、いわき東高校戦なども物語としては泣けます)してほしいなんていう叶わぬ夢を本作を観てこころに描いたりしました。
また本作品ではまだまだリョータの逸話しか挿入されておらず、ドカベン31巻での多数の登場人物の逸話には数としては遠く及ばずであり、一ファンとして今後、桜木はもちろんゴリさん、流川、仙道、メガネくんらの逸話をサイドに挿入しながら、さらなる「THE SECOND SLUM DUNK」「THE THIRD ・・」といった感じで新作映画版を期待したいものですが、これはさすがに儚い夢ということにしておきましょう(笑)。