本作を上映開始間もない11月の日曜日にT-Joy東広島にて鑑賞してきました。 言わずと知れた「君の名は」「天気の子」に続く新海誠監督の最新作です。
このブログでは新海監督と細田守監督の全作品をこれまでに取り挙げてきているのですが、日本アニメ界においてそれぞれ独特の陰と陽を表現する至宝のふたりです。しかし以前のブログでも触れたように最近では、かつての新海監督が陰、細田監督が陽という単純な構図ではなくなりつつあり、ふたりともそれぞれ陰と陽が作品内に混在するようになり、それに伴い作品に深みが出てきていますので、本作でもそれらがどのように表現されているのか楽しみにして映画館に駆け付けました。
新海監督の作品は音楽にしても絵の表現にしても作品ごとに徐々にパワーアップしているのですが、本作もその期待にたがわぬものになっていました。
よい作品は複合的な要素が常に盛り込まれており、本作も当然さまざまな複合的要素がとりこんであり複数回の鑑賞に耐え得る作品ですが、それでもやはり新海監督の初期のころからのメインテーマである「少年と少女の出会いと別れ、そしてふたりのその後」がしっかり中心に据えられていました。
過去の悲しい出来事によりこころに欠落を抱えながらも、九州(おそらく宮崎)で元気に育つ岩戸鈴芽(天岩戸神話の踊り子アメノウズメから引用?)。そんな彼女がある日出会う謎の多い素敵な男性・宗像草太(宗像神宮由来?)に出会い、彼の生業である「扉の戸締り」を通して、日本各地を回り、人々の温かさに触れあいながら内面的に成長し、最後に育ての母(実母の妹)自身の葛藤と確執の表出に直面しながら、母親を喪った災害(東日本大震災)の故郷にたどり着き、彼とともに後ろ戸の戸締りをやり遂げます。その間、草太への自身の想いに気づき、自分自身の存在意義も確認しながら、これから待ち受ける未来に向かって歩いていく決心をしていく物語です。
もちろん本作は上に記したような物語の主題にとどまらず、さまざまな示唆と映像美(とくにいつものことながら写真のようなリアルな風景描写と階層豊かな色彩の空や雲や空気の表現には圧倒されます)、素敵な音楽や歌声にも満ち溢れていて、まるで物語の万華鏡であり、上質な表現に触れた時間となりました。
一方で、少女の成長物語の裏物語として、日本神話における災害(ミミズ;オロチでもよかったかも)とそれを防ごうとしてきた人々(閉じ師)の闘いも示唆されています。
さらに大きな視点で俯瞰すると、東日本大震災による喪われた魂たちの救済という面もあり、地震をはじめとした災害に見舞われやすい我が国ならではの作品でもあります。
そしてこれから起こるであろうさらなる災厄への警告という面まであります。とくにいま巷で話題になっている2025年7月に訪れると予言されている津波を伴う災厄についての示唆も個人的には感じたりしました。
なんやかんや言っても本作はまた再修行となること間違いなしの奥の深い作品であり、こうした映像も音も物語も雄大な作品は劇場で観ることが一番であり、わたしも新海監督の印税アップにしっかり貢献すべくまた劇場で修業し、この文章も都度グレードアップしていこうと思います。
新海監督、またまた素敵な作品をありがとうございました。わたしも人との出会いと別れを常に大切にしながら、日々を生きていく所存です。