ドリームプラン

先日、わが街の映画館T-Joy東広島にて本作を観てきました。

 

テニス界のレジェンド、ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹。そんな姉妹を子ども自分から厳しく育てテニス界におけるレジェンドに育て上げた父親である、リチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミスが好演しています)の物語です。

 

テニスのまったくの素人であったリチャードが、娘らふたりにテニスの才能を感じ取った結果、仕事をなげうち、女王獲得まで周到で長大な計画(プラン)を練って、現実にふたりともテニス界の女王に君臨させていく物語の展開にはこれがフィクションではなく本当に起こった事実とは信じがたいという感慨も生まれてきます。

 

しかし本作は、姉妹が栄光をつかむところまで表現してくれると思いきや、物語としてはヴィーナスのプロ初戦を戦った時点で終了しており、初期の無名の成長時代を中心に描いています。なのでセリーナのプロでの活躍はまったくなしです。

 

これはあくまでもリチャードの物語というわけです。映画はそのリアルな映像と懐かしい当時の音楽を背景にしながら、リチャードの哲学を強く主張し続けます。それは「ものごとを極めたければ、心身両面での鍛錬が必須である」という哲学です。要は、スポーツだけ一生懸命ではだめで、勉学や心の鍛錬もしっかりやらなければだめだということです。現実に勉学を優先している余り、彼女らの強さを噂で聞いたテニス界からの強いプロデビュー要請を断り続け、ヴィーナスの初期は、公式試合にもほとんど出させなかったという方針は、実は本作で初めて知りました。

 

あれだけのパワーテニスで世界のテニス界を席巻したのですから、10代前半からは朝から晩までテニス漬けで鍛えてまくっていたのだろうと思っていたので、「本当に頂点を目指すには、肉体だけでなく、精神面も重要」ということをリチャードは実践し、それを徹底していたわけです。このエピソードで思い出したのは、わが日本が誇る故・野村克也監督です。彼も「野球を極めるには、肉体的な技術だけではなく、人間的成長がなければならない」と生前つねに語っていたことを思い出しました。

 

おそらくどんな世界においても超一流となるには、外面的な技術だけではなく、こころを中心にした内面世界の鍛錬が重要ということを本作には改めて教えられました。

 

なんだか当たり前のことなのかもしれませんが、世界のテニス界で大成功したウィリアムズ姉妹という事実を目の当たりにすると、説得力があり、自分に振り返ればまだまだの部分が多く、少し気が引き締まる作品になりました。

 

このように本作は、父親の頑固と賢明な方針の末にヴィーナスがやっとデビュー戦を戦ったというところで終了しています。テーマがテーマだけにそれもやむなしなのですが、それでも、姉妹がプロデビューしてからもおそらくさまざまなドラマがあったはずなので、本作は立志編として、続編で戦闘編、続々編で栄光編として、姉妹の成功への過程をまた観てみたいな~なんて思いながら、春が近づく火曜日の夜の闇のなか帰路に着きました。