本作を秋の深まりつつある夜に、ちょうど時間的にタイミングが一致したので、T-Joy東広島にて鑑賞してきました。
藤原竜也さん演じる、元直木賞作家の津田。彼はその栄誉に似合わず、地方都市・富山に住み、裏業界の運転手に勤しんでいる。そんな彼がひょんなことから1000万円を手にし、使ってみたら偽札だったことから、街の闇のドンと関わっていくという現実の話を虚構であるはずの自らの新作の小説の世界として描き、そのことに気づいた編集者が虚構と現実を行き来する物語に巻きこまれていくという複雑なストーリです。
藤原くんや豊川悦司さん、風間俊介といったなんでもござれという怪優たちが演ずる不思議な街での不思議な物語。こんな物語がいまも日本の各地で繰り広げられていると考えるだけで、こころが少しわくわくしてしまいました。
日常と非日常の間に潜む闇と光と人間のおかしさ。そんなものが上品にスクリーンに力むことなく淡々と密やかに表現されており、これははまる人には思い切りはまる作品という感じで、ちょうど「アヒルと鴨のコインロッカー」のような作品が好きな人には強くおすすめしたい本作でした。
わたしも日常に潜む世界に想像を巡らせながら、やさしい月の照らす秋の夜に滑り込むように帰宅の途に就きました。