本作を春を感じさせるような暖かな冬の夜に、T-JOY東広島にて鑑賞してきました。
待望の岩井俊二監督作品です。すべての映画監督のなかでも、独特の映像や音像の美学、美しくロマンティックな物語を常に作品を通して提供してくれています。べた褒めですが、古いブログを読んでくださった方ならお気づきのようにわたしは大の岩井俊二ファンであり、20代で岩井監督の作品に出会い衝撃を受け、その映像世界に刮目させられたことが今も映画を観続けているエネルギーのひとつともいえ、一度もお会いしたことはありませんが、映画界のこころのメンターとも言えます。(ちなみに10代のときは尾道出身の大林宣彦監督です)
タイトルからして、あの名作「ラブレター」との関連も思わせ、実際に豊川悦司&中山美穂のコンビも本作にちらりと顔を出しており、他の出演者らの顔ぶれも岩井監督の作品ではよく見てきた顔ぶれであり、まるで集大成のような作品なのかな?という印象さえ持っての修行と相成りました。
さて観終わった感想ですが、監督独特の情緒あふれる映像は相変わらずで、今回は監督の故郷である宮城を初めてロケ地としており、セットはほとんど使っていないようで、いったいこれは宮城のどこで撮ったのだろうなんていう興味も沸かせるものでした。
遠くに過ぎ去った過去の美しい想い出、無邪気な恋心、現在まで続く恋慕と悔恨、すれ違った想い、成就できなかった想い・・等々を行き交う何通かの手紙を通して繋ぐ。そして最後に封を切られなかった手紙に辿り着く。なんというロマンティシズム。久々だな~この感じ。
映画を観終わった後、遠くに過ぎ去った高校時代の恋心を掘り起こされ、監督から「ねぇ、きみたちにもこんな純粋で遥かに続くような恋心があったはずだよ。。忘れてしまっていないかい?」と問いかけられているような声が幻聴のように聞こえました。
しかし一方で気になったことはせっかくの1番シアターでの上映だったにも関わらず、観客は10人に満たない入りでした。わたしのような岩井監督ファンならば、うっとり楽しめるでしょうが、本作は微妙に作品世界が現代と乖離しており、かつての名作「ラブレター」ほど誰にも伝わるレベルの普遍的な美しい完全な出来ではないということにも気づかざるを得ず、監督の自作を否応なしに期待したいとも思いながら、春の訪れが近づいていることを感じながら、月夜の下、帰路に着きました。