カツベン!

本作を2月に入った夜にT-JOY東広島にて修行してきました。独特な映画的創作世界を見せる周防監督の新作です。

 

本作は大正時代に実際にあった活動弁士という仕事を通して、刑事に追われながらも徐々に成長していく青年の物語になっています。

 

主演の成田凌さんが主人公の俊太郎に見事にシンクロしており、物語の最後には彼自身が見事なカツベンぶりを身に着け発揮するにつけ、拍手を送りたくなるような作品になっています。

 

その過程のなかで、幼馴染の初恋の女性も失い、劇場も火事で焼け、カツベンの仕事も失い、刑事にもしょっぴかれ、主人公は一旦全てを失いなにもなくなってしまいます。人生は甘い蜜もありながら現実はとても厳しい・・・ということをさりげなく銀幕を通して若者に喝を送っているところなどさすが周防監督だと思いました。

 

あわせて,大正時代、おそらくまだ国も貧しく誰もが未来に向けて不安を持ちながら、落ち着かない気持ちで必死にモボやモガたちが生きていた時代の空気感の映像化、音像化もさすがの周防監督の魔法がそこはかとなく漂っている作品でした。

 

観るものはゼロになった俊太郎が未来に向けて歩んでいくことを確信しており、「人間には大好きで賭けるものさえあれば、どこでだって生きていける」というような監督からの励ましをもらってような気がして、いい歳をとったわたしなどもいつもより少し元気になって、映画館を後にしました。