食べる女

本作をもう終映間近の週末にT-Joy東広島にて鑑賞してきました。

 

本作は食べるという業(なりわい)というフィルターを通して、それぞれの人生を生きている、自由で自立しながら、ちょっと孤独で温かい女たちの生活をオムニバス的に挿入しながら、男という隠し味を縦糸に紡いで徐々に集約していくささやかなコミュニティを穏やかな視点で描いていく佳作でした。

 

個人的にはこうした穏やかで温かい自由なコミュニティには昔から強くあこがれている自分がいます。

 

しかし本作はよく見ていれば気づくのですが、それぞれの女性たちは、小泉今日子演ずる主人公自身が作家であることをはじめとして、常に自分の才覚をもってこの世知辛い世の中という大河を上手に渡っています。

そうした日々の懸命な営みの向こうで、ときどき羽目を外したり、寄り添いあったりしているわけです。まるで優雅に泳ぐ白鳥の水面下で営まれる足のように。

 

こうした日々の切磋琢磨を通して、自由で自立したコミュニティというものはギリギリのところで成り立っていることを実感しながら、自分にしてもいつか古くからの仲間たちと穏やかで温かいコミュニティを形成しながら、こうした素敵な羽目の外し方をたまにはしていきたいと思ったりしました。そのためにもわたし自身、いま目の前にあるやるべき営みをまずはして、その景色の向こう側の方にこうした世界を垣間見られたら・・・なんて思いながら、秋のさわやかな夜風に吹かれながら帰路に着きました。