本作を4月に入った月曜日の夜にT-Joy東広島にて修行してきました。スピルバーグ監督は最近、エンタテイメントと実録ものを並行して製作していますが、これはもちろん後者に該当する作品です。
スティーブン・スピルバーグ×メリル・ストリープ×トム・ハンクスというスタッフの顔ぶれだけで、これが特別なテンションで作られた作品であるという予測がつく作品です。アメリカを代表するこのふたりの共演は意外と初めてとのことです。
アメリカの苦悩を深め、泥沼化したベトナム戦争。こんな悲惨なベトナム戦争について、状況を冷静に分析し、この戦争に駄目だしをしていた、国防省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在とそれを探しだし、新聞というメディアでその内容を発表するか否かの葛藤と発表までの過程をめぐる物語です。
本作は、以前にこのブログでもとり上げた2年前のアカデミー賞作品賞「スポットライト」と共通の臭いのする作品です。
とんでもない政府文書を獲得して、真実を知らせるべきか、政府の事情を忖度して、その事実を知らぬふりをしてやり過ごし、新聞社の安泰を図るべきか・・・の選択を迫られながら、勇気をもってその公開に踏み切った結果、それが意外にも司法にも国民にも熱烈に支持されていく。
一言で言って、どこかで観たことのある、アメリカ的映画ではありました。
昨年、トランプ大統領がアメリカ大統領に就任し、自らに都合の悪いニュースをフェイクニュースとかなんとか言いながら、何が真実で何が虚偽だか判然としない現代。
そんな世界のなかで、「真実はつねに誠実で勇気あるメディアによって明らかにされなければならないんだよ」と監督が世界に叫ぶ姿が思い浮かぶような作品。一方で「映画というメディアには何が正しいかを人々に思い出させる力もあるんだ。だからぼくは映画を作り続けるんだよ」と穏やかに耳元でつぶやく監督の本音もちらほらする作品になっていました。
良くも悪くも、今のアメリカ、そして現代の日本にも当てはまる、「政府とメディアとの正しい関係」をやんわり主張する佳作的作品でした。