ラストレシピ  麒麟の舌の記憶

本作を冬の足音が聞こえだした肌寒い夜に、地元T-JOY東広島にて鑑賞してきました。主演の二宮くんは嵐のメンバーとしても活躍しながら、俳優としての才覚も秀でておりいつも印象に残る役柄を演ずる(「黄色い涙」「母と暮らせば」とか「硫黄島からの手紙」とか素晴らしかったですよね)ので今回はどんな素敵な役柄を演じるのだろうと思いながらの映画館入りとなりました。

 

本作の基本骨格は満州国という日本が作った国を舞台にさまざまな思惑のなかで、おいしい料理を作るという夢と理念に準じた人たちとその後の物語です。天才ながらも、料理店経営に失敗した主人公がなぜか中国の偉大な料理人から、幻のフルコース「大日本帝国食菜全席」を再現するよう依頼されるところから物語は始まり、徐々に過去と現在が繋がっていき、最後はなるほどと思わされる結末に出来上がっています。

 

ニノくんもさすがいい味出して演じています。ただあえてツッコむとすれば、西島秀俊演ずる山形直太朗は自分の料理にからむ関東軍の陰謀を防ぐ方法として、ああした自分の命を危険にさらすような露骨な反抗的方法をとらずとも、指示された毒などを料理に入れずにしれっと自分の料理を普通に作ればいいだけなのでは?とは思ったりしました。

それと今も根強くある、満州事変に代表される戦前の日本軍悪人説に影響されすぎているのかな?とは思ったりはしました。でもそんな歴史的考証よりも人々の親切と運命に導かれた天才料理人の数奇な体験と巡り会いという奇跡の物語を素直に楽しめばいいのかもしれません。

 

本作は、フィクションながらも料理版ファミリーヒストリーという展開が巧妙であり、さすかは名番組「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」を手がけた演出家・田中経一さん原作だな~と妙に感心したりしました。

 

ところで、もし満州国を題材にするなら、いつか石原莞爾を主人公にした実録ものを観たいものです。彼は戦前日本の異端児であり、革命児でもあり、宗教家、思想家でもあり、その思想内容や人生観、生きた時代は全然異なるものの、日本のチェ・ゲバラともいえます。いつか謎が多くも壮大な世界観、稀有な実行力が彼の人生物語として映像化される日が来たらこんな素敵なことはないと思ったりします。

 

最後に、少し気になったのは、本作は大ヒット上映中とかテレビとかでも大大的に宣伝されながら、封切間もなくにもかかわらず、月曜夜の映画館はまばらでわたしを含めても5人ぐらいしか入っていなかったことです。秋元康プロデュースということで、テレビCMやコンビニとのコラボ企画もかなり盛大な本作ですが、実際の興業はそれほど大入りというわけにはいっていないのかな?という印象を持ちながらの帰路となりました。