本作を秋も深まってきたある月曜の夜にT-JOY東広島にて鑑賞してきました。予告編のころから気になる作品であり、女優として観る作品ごとに異なる側面を表現し確実に成長を続ける有村架純さんの主演作であり、映画館での上映を見逃すわけにはいかない作品でした。
観終わって、だれもが一生に一度は経験するであろう恋する時間の魔法やその世界の揺れ、その儚さ、せつなさ、美しさに思わずため息が出ました。
教師と生徒の恋愛ものとの一言では片づけられない微妙な心の機微、想いの奥深さと恋の儚さ、美しさがそこにはありました。期待通り、主演の松本潤さんと有村さんはこの美しくもせつない刹那の恋を演じきっています。
淡く消え入りそうな、おそらくその後の人生でもう二度と出会えないであろう輝く恋の煌めきが、言葉だけでなくその視線の行方や互いの沈黙、せつない表情を通して、見事に表現されていました。
こころに他者と分かち合えない閉塞感と淡い脱出への希望を抱きながら背徳の扉の向こう側の世界を焦がれるものの、そこへはたどり着けないであろうと予感するふたり。そんなふたりの間に漂うこころの揺れや震えを見事に映像として表現されていました。いやはや行定監督もあっぱれです。ラストシーンはなにかデ・ジャブのような感覚さえするぐらい、状況は違ってもかつて本気の恋をしたことがある方なら強くこころをわしづかみされること請け合いの作品でした。本年の恋愛もの邦画のベスト1といえるのではないでしょうか?
状況はもちろん違うのですが、本作によってわたしの記憶の奥に潜む、20数年前のときめきと煌めきの彼方に最後はせつなく散った恋を思い出しました。今回のブログがいつもより揺れているのは、本作によってこころの個人的記憶の琴線が爪弾かれたのかもしれません。なので本作の評価も観た人それぞれの経験にかなり左右されるような気がします。
また映画的な味付けとして、劇中の重要な場面でつねにまとわりつく水音(雨や富山の海や運河の流れ)がいいアクセントにもなっていました。人の体験や記憶はそれがどんなに切なく激しいものであれ、流れる水のごとく移り去っていくのだけれど、その感触だけは我々が生きていく限り、水が身近にある限りつねにそこにある・・・という示唆も感じたりしました。
誰もがこころに秘める一生に一度の最高の恋・・・わたしにとって本作はその名にふさわしい物語であったように思います。本作はまた観たいと思ったものの、いやあえてこのまま観ずに一度きりの映画体験として自分のこころで熟成させたほうがいいのかもしれないと思わされた、こころに刻み込まれる素敵な作品になりました。未鑑賞の方はまだ上映されているので、映画館でぜひ体験くださいませ。
P.S.実は主演の葉山先生を演ずる暗い影がさす黒縁眼鏡のクールなすかした野郎(男優)はいったい誰?と思っていたら、なんと嵐の松本潤さんでした。(恥ずかしながらそんな予備情報もなく映画に臨んでいたのです)いやはや嵐は多才な人が多いのだと今更ながらに感嘆させられました。また最近、富山を舞台にいい映画が撮られることが多いような気がします。立山連峰や富山湾に囲まれた狭隘で厳しくも豊かな自然は映像を通してだけでも素晴らしく、近いうちに訪れてみたいと思ってしまいましたよ。