本作を終映まじかの広島市内のサロンシネマにて修行してきました。「そして父になる」以来の是枝監督+福山雅治主演作品です。是枝監督は独特の映像美をもつ絵の切り取り方をする監督です。その対称性や静寂性、光の明暗を際立たせる、落ち着いた絵の作り方は、日本映画界最大の至宝であった故小津安二郎監督の直系弟子ではないかな?な~んて思ったりしています。なのでわたしは是枝監督作品は「歩いても歩いても」ぐらいからは言葉通りの皆勤賞で映画館に馳せ参じているのです。
さて実際に観ての感想ですが、本作は内容的にはやや??という作品でした。決定的なのが、三度目の殺人をする犯人の犯行動機が映画後半に明らかにされるのですが、この動機で三人めの殺人に至るというのはわたしにとっては??であり、正直拍子抜けでした。実はこころの医者を永年していると、こういう家族背景や陰の側面にはときどき出遭うのです。しかし、みんな誰も殺していませんし、殺されていないのです。
私感ですが、もしそれによって憤りや怒りが噴出するものであっても、せめて人を殺さずとも他の善処への道があっただろうに・・と思わざるをえませんでした。殺人というのは、重いものであり、それらと等価な動機とは到底思えなかったのです。
せっかくだから本作は弁護士と犯人、検察の法廷劇という側面もあり、法廷の場でもう少し犯人や弁護士のこころの奥底や魂の慟哭を炙り出すような演出をしてみたら、もっと深みが出てずいぶん印象の変わる作品になったような気もしたりしました。
でもこれらも所詮はわたしの偏った見方かもしれず、その辺のところは本作を観た誰かとお酒でも飲みながら楽しく論議してみたいところですが、孤独な映画修行者のわたしの周りには現時点で本作を観た人はほとんどおらず、残念ながらそれはかないません。ここが学生時代と違うところで、社会人の侘しいところです。
やや厳しいものの言い方になりましたが、それでも本作は弁護士役の福山雅治さんと犯人役の役所広司は互いに熱い俳優バトルを展開しており、前述したように監督独特の映像美もあり、そのサスペンス的展開などもあり、まったくラストまで目の離せない十分楽しめる娯楽作品であり、やはり福山ファンは絶対見逃せない作品であることはいうまでありません。わたし的には次の是枝監督の作品に期待です。次は阿部ちゃん主演が久々みたいものです。