関ヶ原

やっと秋の風が吹き始め、夜もすっかり過ごしやすくなりましたね。わたしの映画修行もしばしの夏休みをとっておりました。この間、恒例の海水浴に行ったり、懐かしい友達と再会したり、いろいろと充実の夏を過ごさせてもらっていました。

 

さて久々映画修行の再開は司馬遼太郎原作の大作「関ヶ原」です。このテーマは歴史好きでなくとも日本人にはもっとも有名な戦でないでしょうか?最近多くなった戦国戦乱ものの大御所と言える本作の登場です。

 

さまざまな英雄が割拠するなかで、本作の映画化では石田三成に焦点をおいて物語が構成されていました。一見、人情に薄いと見られていた三成が実は情けも愛情もしっかり持っていたというエピソードを軸に、ライバル家康との関ヶ原での決戦を映像的にもまずまず破たん無く描き切っています。

 

いろいろな不満をあげればきりがないですが、エピソード満載のこの戦の起承転結をたった2時間半で描いたわけですから、これは大健闘と言えるのではないでしょうか?

石田三成がなぜ戦場で切腹を図らずに逃亡し、あげく捕えられ斬首されるという屈辱にまみえるという選択をしたかは歴史上謎が多い史実なのですが、そこを三成なりに、こうしたおおいくさを起こした首謀者としての矜持があったという物語にしていますが、これはこれでなるほど~こういう見方もあるか・・という感慨を持ちました。

 

本作の醍醐味はやはり実際には見る事のできない想像上の戦国武将を実際に映像化したことでないでしょうか?とくに島左近と大谷刑部の出で立ちと人となりは生き生きと描かれており、島ってこんな感じの武将だったんだという認識をいまさらながらに持ちました。

 

本作のテーマとして、正義=三成、野望=家康という構図で関ヶ原を描き切っていますが、もちろんそういう見方もできますが、史実を知っている後世に生きる我々としては、三成の豊臣への愛や正義よりも、家康の天下泰平の理想がその後の日本を作っていったことを知っているわけですから、三成の滅びというのが歴史の必然であったと、今更ながらに思いを新たにしました。だいたい主君である秀吉の晩年の横暴がこの戦に至った遠因でもあったわけですから。

 

いずれにせよ、この魅力的な物語をまた原作で再読しようという気持ちがふつふつとわいてきているわたしがいるということが本作が魅力的だった証拠だと言え、いい映画を観終ったあとの感慨を胸に気持ちのよい秋の夜風に吹かれながら真夜中に家路に着きました。