本作をそろそろ終映間近の時期に滑り込みでT-Joy東広島にて観てきました。
『原作・重松清、主役・阿部寛』とくれば、あの文学映画の傑作「青い鳥」の組み合わせであり、こうした世界に魅力を感じるわたしとしては、なんとか間に合ってほっとしての鑑賞となりました。
恋妻家(こいさいか)とは、妻への恋の感情に再び取りつかれた不器用な夫という監督自身の造語だそうですが、本作を観てその意味がよく理解できたような気がします。最期の駅でのふたりの掛け合いのシーンはどこかで観たような記憶がある情景でしたが、これもまたよし。
音楽も映画も、作品そのものは独立したものであるように見えても、実はそのアイデアやイメージは互いに繋がっていて、本当のオリジナルというものはないのではないか・・・?と最近とみに思っているわたしにとっては、しっくりとくる物語でした。
何かの縁で出会った人々が繋がったり、また離れたり、再び恋することがあるという当たり前の話がじんわりと心に沁みる物語でした。
いまや不器用な男を演じさせれば、日本一の阿部ちゃんが固いながらも柔らかいというハイブリッドないい味を出しています。相方の天海さんはこの手の話としては、見目がきれいすぎる感触もありますが、まあこれもよし。
映画のエンドロールにて、吉田拓郎の楽曲「今日までそして明日から」(ボブ・ディランの「My Back Pages」でも面白かったような気もしますが・・)を懐かしく聴きながら、あっという間に流れていく、ささいな日常や年月のことを思い出し、これから続く今とその未来を愛おしく感じさせてくれる佳作でした。