怒り

評判の大作である本作をT-Joy東広島にて修行してきました。最近は「悪人」「許されざる者」といった大ぶりな作品が続く李相日監督の最新作です。李監督は大傑作「フラガール」で魅了されて以来、常に注目し都合をなるべくつけてなんとか映画館でその作品を見続けている監督であります。

 

本作は、予告編にても理不尽にあふれた、夫婦の残虐殺人現場に残された「怒」の文字が強烈に印象に残り、「怒」の動機としてどんな怨念、執念が隠されているのだろう?という期待を持っての鑑賞となりました。

 

さすが定評のある李監督作品というべきか、出演陣がふるっています。ざっとあげただけでも、渡辺謙、松山ケンイチ、妻夫木聡、森山未來、綾野剛、宮﨑あおい、池脇千鶴、三浦貴大、広瀬すず、ピエール瀧・・などなどそうそうたる顔ぶれです。まあよくもこれだけ主役級を集めたものです。吉田修一原作、李相日監督というコンビがいかに役者さんに信頼されているのか、これだけでも想像がつくというものです。

 

さてさて実際に観終わっての感想ですが、人間の情念と狂気を独特の詩情で表現する李監督節が炸裂していました。並行する三つの物語はどれも怒りと哀しみにあふれていて、ひとつひとつがディープでした。こういう世界もあるかも・・という感慨にかられてしまい、思わず感情移入してしまいます。

 

しかし、一方で期待?した、残虐な殺人に至った、怒りの本当の原因というのはなんともあっけなさすぎて、びっくりしました。正直、こうした種の怒りで、行きずりに殺された側としてはなんともたまらないな~という感想さえ持ってしまいました。

 

もしこれが観る者のそうした感想さえ、あらかじめ狙われていたものであれば、そういう意味では、なんと不条理を鮮やかにかたちどった作品でしょうか?

これが原作者の意図であれば、脱帽であり、見事にその意図は達成されていましたが、何事にも筋道や了解を求めがちなわたしのような人間から見れば、くらくらするような理不尽さであり、せつなくつらい気持ちになる映画であり、修行後はどうもモヤモヤしたものが残る一作でした。

 

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (木曜日, 15 12月 2016 10:24)

    東京,千葉、沖縄のそれぞれ違ったエピソードがバラバラにならず,役者みんなが素晴らしい演技をみせてくれる非常に印象深い作品でした。 特に東京編でみせた妻夫木,綾野の愛と疑いの葛藤がこの映画の大きなテーマであったような気がします。
    修行してから三か月以上経ちますが,重い気持ちが今でもよみがえってくる映画です。

  • #2

    シネ丸 (木曜日, 15 12月 2016 10:25)

    東京,千葉、沖縄のそれぞれ違ったエピソードがバラバラにならず,役者みんなが素晴らしい演技をみせてくれる非常に印象深い作品でした。 特に東京編でみせた妻夫木,綾野の愛と疑いの葛藤がこの映画の大きなテーマであったような気がします。
    修行してから三か月以上経ちますが,重い気持ちが今でもよみがえってくる映画です。