正月明けの慌ただしさがやっと一段落した、週明けの夜に本作をT-Joy東広島で観てきました。
富山の新湊を舞台にしながら、江戸時代から伝わる曳山祭を横糸に、かつて仕事上での見解の相違をきっかけに袂を分かった親友との友情を縦糸に、ていねいに織り綴られた、人と人との物語でした。
監督はかつて、昭和のテレビドラマの傑作と誉れ高い「池中玄太80キロ」の演出を手掛けた石橋冠。このドラマの放映当時わたしは中学生ぐらいだったと思いますが、北海道の雪や原野でのシーンが心に残る人情あふれる物語だったような記憶があります。西田敏行さんの出世作でもあり、人生の一作になった作品ではなかったでしょうか?
物語自体は日曜名作劇場的ないつか見たデジャブ的な展開を見せるものの、こうしたありふれた物語のなかにこそ、物事の真実が潜んでいたりするわけで、心を確実に温めてくれます。
本作で特筆すべき点は映画の舞台となる街や自然の風景です。
富山射水市の人々の間を流れる川や横たわる海、壁のように屹然とたっている立山連峰の風景が素晴らしく、わたしなどはそこに心を奪われてしまいました。
富山はわたしが敬愛する藤子不二雄先生らの故郷(高岡市も素敵な街ですよね)でもあり、あの「まんが道」でも悠然とダイナミックに描かれた立山連峰を久々映画ならではの大迫力の映像で会いまみえることには、いささかのノスタルジックな郷愁をわたしの胸に吹かせてくれました。
わたしの勝手な想像ですが、寒い日本海と険しくはだかる立山連峰に囲まれた狭隘な土地で人生を送ることは、まさに始終厳しい自然と相対することであり、その分だけ人と人が繋がり協力しあわなければ生きていけなかったからこそ、こうした熱い祭が現在も熱く続いているのでは?なんて思ったりしました。
そういえばわたしの郷里にも「いしどり祭」という大きな太鼓や鐘を備えた山車を子どもや大人が分け隔てなく一日中街じゅう引きずり回す祭が秋に行われています。
故郷を離れてはや30年近くがたとうしているわたしにとっては、同じ時間だけご無沙汰しているのですが、またいしどり祭に参加してみたい気持ちになりました。
そうした意味でも本作はありがたく、観終ったあと感謝したい気持ちが残る映画となりました。土地や人との絆の大事さと教えてくれる素敵な作品であり、殺伐とした気持ちに陥いりそうなときにぜひおすすめだと思います。
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