今年のお盆休みはどこにも行かずに過ごしたので、広島市内にて映画三昧のお盆を過ごしました。お盆シリーズの3作めが本作です。巨匠・河瀬直美監督によるカンヌ映画祭・ある視点受賞作品です。春ごろから話題になっていたにも関わらず、なかなか機会に恵まれず、やっと遅ればせながらロングラン上映をしているサロンシネマ1にて鑑賞できました。
まずびっくりしたのが、もう封切4か月ぐらいたっているのに、観客の多い事、多い事。映画開始ぎりぎりに到着したわたしはエクストラチェアでの鑑賞となり、映画館はもうこれ以上ひとりも入れないという超満員でした。これは当然期待も高まります。
前情報も仕入れていなかったので、映画が始まり「あん」というタイトルの意味は食べるあんこの「あん」ということが初めて理解したわたしですが、物語のおもしろさにぐいぐい引き込まれていきました。
あんこを通した、さまざまな人間模様が交錯するなかで、突然どこからともなく現れた素性不詳のおばあちゃんの作るあんの素晴らしさ、人々の一瞬の賞賛と行列。それとコントラスをなす世間の非情な偏見、静かに訪れる人々の冷たさ。これらが美しい春の風景のなかで、つかの間咲き誇り、世間という春風に吹かれ散ってゆく桜の花びらのように過ぎ去っていく。そして残された人はある決意をもって人生の転換をゆるやかに切っていく。
こう書くと、なにがなんだかわからない内容に感じられるかもしれませんが、この駄文を読まれた方は騙されたと思って本作をいつかDVDででも観てやってください。上の文章の意味がきっとわかりますから。
観てもらえれば、映画の素晴らしさとその可能性、美しさが同時に感じられること請け合いです。
本作により、カンヌ映画祭の審美観も健在なんだと思わされたと同時に、なぜ河瀬監督(カンヌ映画祭の審査委員も務めるほど)がこれだけ世界の映画界で賞賛されるかやっとわからせてくれた作品になりました。わたしにとっては、いまのところ本年の邦画では垂涎の一作です。
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シネ丸 (水曜日, 23 9月 2015 20:39)
筆舌に尽くしがたい悲しみを乗り越えた徳江婆ちゃん。優しさ溢れる声で発せられる「店長さん」 その暖かい心に触れ人間性を取り戻していく千太郎。 エンディングの「どら焼きいかがですか」徳江婆ちゃんの愛が詰まった「あん」 そして「どら焼き下さい」の声、ああ日本映画ここにありですね!
四季のこころ (水曜日, 21 10月 2015 10:36)
重いテーマなのに、それをあえて爽やかに表現する。これぞ古来から通ずる日本文化の神髄という印象が残り、いまもこころのなかに本作のイメージが流れているほどです。ほんとにいい映画でした。
tomiyasu motoharu (土曜日, 27 2月 2016 10:05)
殯の森もみていなんです。みたいみたいとおもっていて、時間がたってですかね。ドリアン助川さん、小説も書くんですね。