本作をやはりお盆休みにはしご上映でサロンシネマ2で鑑賞してきました。やはり終戦の夏、また集団的自衛権の法案の論議もあり、ばりばりの反戦&残酷映画です。これはかなり悲惨な気分になるかも・・・と覚悟しても修行となりました。
監督自身が主演を演ずる、元作家の日本兵が東南アジアの片隅で、日本軍は武器も少なく作戦にも乏しく、負け戦につぐ負け戦で撤退を余儀なくされながら、撤退場所へもたどり着けないほど物量豊富な敵アメリカ軍にぼこぼこにされながら、なんとか運よく?生き抜き帰国するという物語。やや自虐的臭いのする戦後日本の文化人的価値観(アメリカによるWGIPは戦後のインテリほど洗脳したのは皮肉です)で画面は覆い尽くされていました。
戦争の残酷さがこれでもかというぐらい画面いっぱいに展開され、人間は限界状況では人肉さえも食らうという戦争の悲惨さ、過酷さを現代の映画技術でリアルに表現されていました。本作を観れば、だれもが二度と戦争だけは避けなければならないという気持ちになるはずです。もちろんわたしもなりました。一方で、当時の日本人だって決して好戦的(WGIPでは日本悪玉論をうまく戦後日本に浸透させました)であったわけではなく、できれば戦争だけは避けたいという想いで必死に外交で努力した日本人も多数おり、開戦に至った経過を歴史的によく検証すれば、石油をはじめとした物資の輸入を封鎖されたり、ハルノートを突きつけられたりと追い詰められた過程の結果であり、日本側からすればやむに止まれずという側面があったわけで、戦争を回避する手段としての外交(今もTPP交渉が大詰めを迎えています)がこれからの日本にはさらに重要だという想いを新たにしました。
本作でひとつ残念だったのが、物語の舞台、背景の説明が少なくかったことです。おそらく監督の狙いは、ストーリーうんぬんより、戦争の悲惨な体験映像を大画面でからだとこころごと観客に受け止めてもらうという意図だったのでしょうが、もう少しストーリーにひねりや展開、おもしろみがあれば、もっと深く楽しめるものになるのに・・・なんて考えたりしたわたしも戦争の本当の悲惨さを知らない「戦争を知らない中年たち」のひとりであるんだろうな・・・とひとり考えながら、平和な広島市内から緑豊かな東広島へ帰りました。
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tomiyasu mtoharu (木曜日, 25 2月 2016 10:18)
戦争をしらない中年のひとりです。団塊の世代は、まだなまなましい戦争の傷跡をみておられるでしょうけど、風化しているでしょう。幼少期を生き抜いた世代なら、はだしのゲンのような世代ならしっかりおぼえているでしょうけど、だんだん語りききがすくないなか風化していくのはさけえないのかもしれません。語りききをきくと臨場感がたかまるともかぎらず、関心や感受性の問題も大いにあります。広島で被爆された方のおはなしをよくききましたが、御自身の昔語りのようであったり、肉親やお子様をなくされたかたの語りは、ときに悲痛そのもので、むねがいたくなります。聞き手の問題がありますね。
シネ丸 (火曜日, 01 3月 2016 15:54)
キネマ旬報ベストレン第二位受賞の記念再上映で遅ればせながら修行してきました。
シネ丸は,戦争の悲惨さのみを徹底的に追及した凄惨な画面に打ちのめされました。
親の遺産をも使いきり,この映画を完成させた塚本晋也監督には頭があがりません。