ラブ&ピース

本作をお盆休みの間にサロンシネマ1にて鑑賞してきました。

園子温監督の新作です。園子温ファンの友だちはわざわざ東京まで観に行ったという作品で、わたしはさすがに広島を離れてまで観に行くということはなかなかできず、前作「TOKYO TRIBE]と同様にあきらめかけていたのですが、待望の広島上映となりました。さすがサロンシネマ。広島映画界の至宝です。

 

さて本作ですが、久々に園監督の痛快な面が出ていました。最近の作品はこのブログでも紹介していますが、「希望の国」「地獄でなぜ悪い?」など最近はやや硬いというか小さいというか、悪くはないのですが、園監督らしい豪快な世界観が影をひそめており、どうしたのかな?と思っておりました。

 

しかし、本作はやってくれましたね。メジャーデビュー作「愛のむきだし」にも通じる、自由奔放な作品です。なので「愛のむきだし」と同様、好き嫌いが大きく分かれる作品になりそうです。わたしは文句なく好きです。大人のための都会のおとぎ話を笑いと涙で堪能させてもらいました。

 

ストーリーは、拾ったミドリガメ「ぴかドン」がうだつの上がらないダメ青年の夢をどんどんかなえてくれ、その欲望とともに体は大きくなり続け、最後はなんとガメラのような怪獣になってしまい、街を破壊しつくしてしまい(でも人は殺さない)、膨らんだ夢風船は壊れていくという一見はちゃめちゃな話なのですが、これが意外に説得力をもって、観る者に迫ってくるのです。

 

かつてジョンレノンが、ビートルズ解散後、1970年代にヨーコとベッドインしながらよく口にしていた「Love&Peace」。このアイコンワードを使い、リアリティとはかけ離れた現代のおとぎ話をこれでもかというぐらいに大胆に展開させる力技。劇中歌もさすが監督自身がつくっただけあって超B級。

 

こんな一見B級グルメのような作品なのですが、フランス料理やアメリカ料理にはない、いいだしが効いていたりするのですからたまりません。とくに劇中に出てくる、おもちゃであるツクダ製「人生ゲーム」の箱が40歳以上の人間には覚えがあるパッケージで泣けました。

 

なんだかんだと書いてしまいましたが、

「頭や理屈で小難しいことは考えずに、観たままを楽しめばいい。それが映画なんだよ・・・」と園監督が語り掛けてくるような映画でした。こうした点からも本作は映画好きなら観とく作品ではないでしょうか。 おそらく観るたびにいろいろな発見と思考にとらわれることは必至で、わたしも機会があればまた観たいものです。

 

P.S.ラストのヒロインの行動は、男にとってはやや甘すぎるのでは?と思えるほど、夢のような展開であり、この映画は園監督をはじめ、まさにすべての男の夢物語だと思いました。

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コメント: 2
  • #1

    tomiyasu motoharu (水曜日, 24 2月 2016 10:20)

    園子温監督作品はヒミズと希望の国をみました。すくいのない閉そく感のなかでいきていくことをあじあわされますが、それでもなんとなくいきることの倦怠と渇望をかんじました。
    ツクダのじんせいゲーム? たしかホテルかなんかたてて資産をふやしていけばいいんですよね。どんなゲームだったかおもいだせませんが、就学前にともだちのいえにはありました。結構おもしろかったかな。偶然ですが、いきつけになりつつあるカフェこかげにじんせいゲームがおいてありました。社名までみておりませんでしたが、なつかしさはこみあげてきました。

  • #2

    tomiyasu motoharu (木曜日, 25 2月 2016 09:11)

    きのう、大雪のなか芸北の北広島町のぞうさんカフェにいってきました。アンティークなお店でして、ビートルズのレコードジャケットがあって、ジョンとヨーコのモノクロの写真がかざってありました。Love&peaceという言葉がぴんとこない世代のほうが増えたでしょうね。わたしはたばこは機会喫煙しますが、hopeやpeaceです。Loveっていう銘柄のたばこはないでしょうかね。
    人間の欲望そのものが、ダイオキシンだったりするんでしょうね。エントロピー化していくのかぁと嘆息します。