本作を診療の終わった月曜日の夜に観てきました。戸田恵梨香の絶叫「わたしはあんたなんか絶対に認めないから」というセリフがわたしの地元の本屋にもエンドレスに何回も流れており、作品自体にメディアミックスの匂いを感じさせます。
しかし、エレガントな生田斗真くん主演でよりスタイリッシュな印象の本作ですが、観てみるとこれがなかなか熱いメッセージをもった作品でした。
シンブンシを頭にかぶって目だけぎろぎろ光る予告犯が、みずから社会不正の人物たちをネットで予告したのちに粛清していく。その果てにあるものが徐々に明らかになってくるスリリングな物語。話自体もなかなかよくできたものなのですが、登場人物のセリフや個々の場面が妙に頭に残る作品でした。
まず、戸田恵梨香演ずる吉野刑事と生田斗真演ずるゲイツとの渋谷川の川底のトンネルを隔てたやりとりはとくに印象的でした。まさに川底のような、互いに恵まれない境遇に育ったふたり。かたや吉野はそんな境遇にもかかわらず歯を食いしばり努力をして東大を出たキャリア刑事、ゲイツはIT企業の社員を目指しながらそんなささやか望みさえもかなえられず、社会の川底をうごめく存在。「あんただってやればなんとかなったはずよ」とののしる吉野に、「おれは頑張る場所さえ与えられなかった」とつぶやくゲイツ。個人的にこのやりとりは結構心にぐさりと刺さりました。わたしも恵まれない境遇?に育った点では人後に落ちないと自負しておりますが、頑張る場所を運よく与えられたわけで、もしそんな場所さえまったくなかったら、ゲイツのように世の中をうらむ存在になったかもしれないわけで、映画を観終ったあとも妙にこのやりとりは残りました。
次に、シンブンシ4人組の最後の晩餐のシーンも秀逸です。自分が死んだあとに残る3人への、ゲイツの配慮とやさしさがぐっと来ました。ゲイツの死後、その意図も理解し、しっかりと必死に社会に戻っていく3人のこれからはどうなるのだろう?なんて考えてしまいました。
そして、死への旅路しか残された選択がなかったように見えるゲイツですが、それでも死という方法を選ぶ前にやることはあったろうに・・・、だいたいIT企業の正社員になろうとする目標自体が間違いだろう・・・なんて物語にもかかわらず、まるで実在の人物に対するかのような感慨にふけったことが本作の出来の良さを象徴しているような気がしました。
観れなかった人はDVDでもおすすめの作品だと思いますので、いつかチェックしてみてくださいね。
コメントをお書きください
tomiyasu motoharu (土曜日, 20 2月 2016 12:07)
めぐまれているか、いないか、これはむつかしいですね。逆境がひとをそだてるという部分があります。こればかりは、どうこういえないようにおもいます。めぐまれなかったことを喜べるとか、逆境をふりかえって喜べるとか、とりまく環境の要因がおおきいでしょうか。そういう自分はめぐまれていないようにおもっていたことが、実はすごくめぐまれていたなと最近しみるようにおもっております。