イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

実は先日の「バードマン」鑑賞と同じ日にサロンシネマ1で本作を鑑賞してきました。ポスターにもあるとおり、アカデミー賞最有力といわれながら作品賞を逃した本作ですが、率直にいって映画として「バードマン」より面白いと思いました。実在の天才数学者アラン・チューリング。ナチスドイツの誇った暗号エニグマを誰もがなしえないやり方で解き明かし、その天才性ゆえに凡人とは異なる感性をもち、結果、平和の時代がやってきたがゆえに迫害され、歴史の闇に消えていった男の話です。


実在の物語だけに重いものがあり、またそれだけにスリリングな展開で観ていて手に汗握る出来でした。全体的な出来としては「アルゴ」よりはアカデミー賞にふさわしい作品だと思いましたが、はずしました。いろいろ考えたのですが、アカデミー作品賞は昨年「それでも夜は明ける」、一昨年「アルゴ」、一年挟んで「ハート・ロッカー」と実話に基づいた作品ばかりが受賞しており、審査員らにもそのバイアスが働いたのでは?と思ってしまいました。そうした意味では「アメリカン・スナイパー」の受賞も外れたのもうなずけます。


いい映画というのはいろいろ考えさせてくれますが、わたしの考えたことをひとつ、ふたつほどあげます。


まずはこの天才の偉業を50年間秘匿にしたということは、英国政府はエニグマを必要とする第三次世界大戦がまたドイツ相手に50年以内には起こることを想定して、チューリングによるエニグマ解読の事実を伏せたかったとういうこと。それぐらい世界は当時不安定だった(今だって不安定ですが)わけで、今となっては感慨深い事実です。


次に、いくら天才といえどもその才能のきらめきには、取り巻く環境と悲しい時代とのシンクロニシティが必要であったということ。彼が平和が戻った戦後もその天才性をさらに純粋数学の世界で発揮し、脚光を浴びていたら、あんなみじめな最期(ぜひ映画館で確認してくださいね)を迎えなくてもよかったわけで、ある意味エニグマ解読という偉業の達成によってその才能も燃え尽きてしまったのでは・・・という印象を映画を観る限り持たざるを得ませんでした。


しかし、彼がエニグマ解読を果たさなければ、連合国の勝利ももしやなかったということに想いを馳せると、チューリング自身はこの仕事を達成するために地上に派遣された存在で、その仕事が終わったら、まるで用済みのおもちゃのように、もう世界に存在する必要はなくなったから消えてもいいよと言われたかのように、消え去っていく。わたしが知るだけでもこうした天才は過去歴史のなかにも多く存在し、天才薄命なんて言葉を思い出したりしました。


それにしても劇中のチューリング自身のセリフ、そしてラストにも語られるセリフ「誰にも思いつかない人物が、誰にも思いつかないことをやってのけたりするんだよ」は泣かせました。チューリングの人生をこれ以上総括する言葉はないわけで、人間の存在の意義や儚さを思ったりして映画館を後にしました。文句なくおすすめの作品だと思います。

 

P.S.恋人役のキーラ・ナイトレイはちょっときれいすぎで、ここだけリアリティからかけ離れていると感じたのはわたしだけでしょうか?(笑)

 

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コメント: 2
  • #1

    シネ丸 (木曜日, 14 5月 2015 11:00)

     主演のベネディクト・カンバーバッジが贔屓のシネ丸にとって,今年のアカデミー作品賞ノミネートのなかでも一番楽しみにしていた鑑賞でした。  コンピューターの父アラン・チューリング変わり者ゆえ成し遂げられたこと,変わり者ゆえ成し遂げられなかったこと,期待以上のおもしろさに「やっぱし洋画のレベルは高いなぁ! それに対して邦画は・・・・」とまた思ってしまったシネ丸です。  この映画はもう一回観た方が素晴らしさがはっきりするんじゃないでしょうか。 

  • #2

    tomiyaus motoharu (木曜日, 18 2月 2016 08:38)

    Enigmaについて全然知識がありませんでした。象形文字やくさび型文字の解読って天才だなとおもいます。まだまだわからない文字とかあるんでしょうね。人工知能がEnigmaにとってかわる日がくるのでしょうか。