スペイン×チリ

「盛者必衰の理」この世は無常です。平家物語は言うに及ばず、ボブ・ディランも歌っていました。時代はつねにうつろいゆき、昨日の勝者は明日の敗者と・・・。サッカーの世界でも同じ理が通用するということでしょう。

前回南アフリカ大会優勝、2年前のユーロ制覇、FIFAランキング第1位のスペインが大会を去ることになりました。今大会のビッグサプライズ・・・スペインの一次リーグ敗退。ここ5年ほど続いたスペイン時代の終焉です。

このチリ戦もなんと0-2。言い訳の効かない敗戦でした。強い強いとみなが信じていたスペイン。しかし、その実はオランダのトップの個人技に圧倒されまくり、チリには得意のパス回しさえお株を奪われるというこの日の展開でした。0-2になってから、最後の意地をみせるかのようにペナルティエリア周辺で華麗なパス回しを一瞬見せたものの、トップのディエゴ・コスタがそれをゴールにつなげられない。代わって入ったトーレスもスペインらしからぬ雑で荒いプレイで、得点の気配もなし。黄金の中盤もなぜかシャビは出ずじまい。さすがにイニエスタあたりが奮闘しようがボールは回らない。盤石な王国を築いていたと信じられていたスペイン王国はわずか数人の不在と不調でかくももろかったということを確認した一戦でした。でも彼らがこの5年の間に築いた素晴らしいパスの展開からスペクタクルなゴールを生み出すというサッカー。言うは易く行うは難しで、かつてスペイン大会のブラジルや日韓大会のアルゼンチンを始め、幾多の国がその美しいサッカーをめざし、挫折し敗れ去ったサッカーを勝利という形で昇華させた功績はやはり称賛するしかありません。今回の敗戦で、その輝きが消えるわけではなく、人々の記憶にいつまでも残るスペインの足跡でした。いまはお疲れ様、そしてありがとうと言わせてください。

それにしてもチリ。もう今大会の台風の目になりつつあると言ってもいいと思います。ボールを持った相手への複数でアタックし、ボールをかっさらう。ひとたび仲間のスティールなどの頑張りにより、敵ゴール前にボールが運ばれていくと見るや、無名ながら何台もの同等の動態性能を持つ戦闘機が一斉に素早く集散しなだれ込むようにして、ゴールへの爆撃を決めていく。めまぐるしくもわくわくするサッカー。素晴らしいです。日本が敗退したら、ぜひ応援させてください。

ひとつだけいただけなかったのは試合終了が近づいた後半30分あたりから、倒れた選手がわざとらしくタンカで運ばれるまで、ピッチに長々と時間をかけ横になり、やっとタンカでサイドに出されたとたん起き上がり、すぐにピッチに戻るという露骨な時間稼ぎをする選手が複数いたことです。日本もコートジボワール戦で相手に試合終盤にそれをされましたが、チリはもうそんなせこい時間稼ぎをする格のチームではなく、優勝を本気で狙えるチームであり、南米独特の勝つためならなんでもするという体質が染みついているのかもしれませんが、これはいただけませんでした。しかし、そんな些末なことを忘れさせるぐらいいいチームです。次のオランダ戦が楽しみです。オランダのトップを中心としたB29ばりの大型爆撃機に、ゼロ戦のような集散自由自在の小型戦闘機軍団が通用するか?さてさてその答えは?もうこの目で実際に観るしかありませんね。

 

P.S. 結果はB29大型爆撃機の勝利でしたね。しかし、試合終盤までどちらに転ぶかわからないほどきわどい勝負でした。このチリが決勝トーナメント一回戦でブラジルと当たるというのもたまりませんね。今からワクワクします。