先週、広島市内にて講演(今回はクローズドの講演会だったので、準備も含めて比較的気楽でした)に招かれた際に、早めに市内に出向き、広島の誇る映画館「八丁座1」にて待望の本作を鑑賞してきました。文句なしの今年度ゴールデングローブ&アカデミー賞作品賞をダブル受賞作品です。本作観ずして何を観る?という期待に胸を膨らませての修行となりました。
最近は実話をもとにした映画が多いですが、本作もそうです。しかし、なんと苦しく重い実話でしょうか。アメリカ奴隷制時代に、北部において自由黒人(こういう身分があったというのも恥ずかしながら初めて知りました)でありながら、奴隷商人の策略に陥り、拉致され、南部に奴隷として送られ、奇跡的な救出劇まで12年間を奴隷として送った実在の男性の物語です。見どころ満載の映画なので、これはもう観るしかないと思いますが、見どころをいくつかあげます。
物語全体の流れとしてはわたしの若いころの大傑作「ショーシャンクの空に」を思い出させるものがあり、ハラハラドキドキです。そして劇中のさまざまな印象的なシーン。ビリーホリデイによるジャズの名曲「奇妙な果実」の意味は知っていましたが、映像で実際に見せられると、なんと残酷な仕打ちだろうかということがダイレクトに伝わってきました。またアカデミー賞助演女優賞をとった女優の被残酷な役どころ(綿花畑での重労働だけでなく、農場主人の子供までも生まされながら、ひどい拷問まで日常的に受けている女性)を始め、映像的に心に刻まれるエピソードが目白押しで、その映像が流れるたびに目をむきました。その一方で、人間の所業は残酷極まるものなのですが、樹木や畑、草原、黒人の涙のような夕焼け空などの映像がこれまたコントラストをなすように美しく、うっとりもしました。スティーブ・マックイーン監督(あの有名俳優とは同姓同名の別人です)恐るべし!!これは久々の絶対おすすめの一本です。この作品ならまた観たいので、わが地元のT-joy東広島においてもぜひ上映してほしいなと思いました。
それにしても、本作の実在の主人公は12年耐えて、それでも奴隷から開放されたから救いがあり、こうした作品にもなりますが、現実にはそんな幸運な黒人はおそらく1%にも満たず、99%の奴隷の身に落ちた黒人が報われずに、過酷な生と死を受け取るしかない時代と体制があったということは、われわれは心に刻み、二度とそういう時代を繰り返したくないものです。
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シネ丸 (金曜日, 04 4月 2014 09:05)
今年のアカデミー作品賞ノミネート9本のうち実話をベースにしたのが6本,それぞれに真実ならではの緊迫感・感動を味わえました。 しかし「それでも夜は明ける」はあまりにも厳しい現実に観る者が打ちのめされる作品であり,アカデミーを与えたアメリカという国の奥深さを考えさせられました。 奴隷を扱った作品はヒットしないとメジャー会社に断られた脚本を,プロデューサーとして実現させたブラッド・ピット 映画のなかで一番おいしい役での出演ですが,全然OKですよね。
fourseasons-clinic (日曜日, 27 4月 2014 17:27)
いつもコメントありがとうございます。最近、時間がとれずすっかり映画修行では置いていかれており、もっと頑張らねばと思う昨今です。この映画がアカデミー賞を受賞したという重みは後世もっと評価されるかもしれませんね。ブラッド・ピットも「マネー・ゲーム」なども含めて俳優としてだけでなく、映画のいいプロデューサーとしても活躍しており、ロバート・レッドフォードのようになりつつありますね。