この夏の戦争関連映画の締めとして、「少年H」を観てきました。戦争当時、神戸に住んでいた少年Hくんの、12歳から15歳(昭和5年生まれの設定でした)ぐらいまでの体験を基にした物語です。戦争に日本が向かうなか、それに疑問を感じる家族(Hくんの親を演ずるのは水谷豊&伊藤蘭夫妻で、結婚後初共演でもあり、これがこの映画の一番の見どころかなとも思いました)の時代を生き抜いていく強さと信念が描かれていました。
しかし、正直言って、物語のリアリティにはうーんと思わざるをえませんでした。神戸というハイカラで先進的な土地柄なら、もしやこういう家族が存在したのかもしれませんが、当時の日本ではHくん一家は本当にレアな家族だったのでは?家族全員がキリスト教徒。父親は洋服の仕立て屋で、主なお客さんは居留地の外国人という生活環境は昭和初期には神戸か横浜ではありえたかもしれませんが、他の地方ではありえない環境ではないでしょうか。確かに、こうした生育環境なら先の戦争は愚かな行為に見えてしまうだろうし、結果、日本はアメリカを中心とするキリスト教連合に敗れるわけで、それ見たことか?という感じの日本の未来を達観した少年がフィルムのなかで躍動していました。まるで最初から負けるとわかっているばかな戦争を始めた日本。少年の目からもそれは明らかだったというような・・・。
こういう見方って戦後メディアが得意とする「後出しじゃんけん」の匂いがし、先の戦争を先進的な家族の少年から見たら、こう映りましたという少々しょっぱい物語でした。
それでも、戦争というものは、置かれる立場によりいろいろな見方があるということを実感するにはよい作品だと思いました。
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シネ丸 (木曜日, 29 8月 2013 10:19)
兵庫県出身者として戦中の神戸はこんなんだったのかと興味深く観ました。
ベストセラー小説の映画化という事で中年の人達が多く鑑賞していましたが、ハイカラ家族の言いたい事言い少年の昔話には訴えてくるものが希薄でした。
少し期待しすぎていたのかもしれませんが、TV局が製作する映画ってなんか薄口ですよね!
fourseasons-clinic (日曜日, 08 9月 2013 18:38)
神戸はいい感じで表現されていましたよね。作品自体は、戦争の結果自体がわかった現代からの視点が多く、戦後メディアの影響をどっぷり受けた、かつて少年だった大人の作品という感じでしたね。映画というよりも、原作自体の限界なのかな~という印象を持ちました。