先日、T-joy東広島にて「終戦のエンペラー」を観てきました。日本の敗戦を受けた戦後処理に関する秘められたエピソードということで、歴史好きとしては、期待と不安のなか鑑賞してきました。内容的にはさらりとしており、ふーむ、そういうエピソードもあったのか・・・という感じで観終わりました。(映画のあと事実関係が気になったので確認したら、どうやらエピソードの鍵を握る女性、アヤと鹿島大将は創作上のフィクションとのこと。歴史にロマンスというのもいいですが、ここは事実だけで攻めてほしかったと思うのはわたしだけでしょうか?)
前回の「風立ちぬ」も同じ戦争に関連したものであり、暑い夏にさきの戦争についての映画を観るというのは、ほぼ毎年の恒例となりつつあります。
いろいろな視点で観ることができる映画だと思いますが、あえていうとすれば、戦勝国(アメリカ)の論理の押しつけというのは東京裁判をはじめ、かほどに強烈なものであったことを再確認しました。
それは、映画のテーマでもある「戦争犯罪」。この言葉自体がいったい何を指すのか?という根本的な問題ひとつとっても、本来、議論は白熱すると思うのですが、当時の戦勝国の論理の押し付けは有無を言わせず強烈です。
戦争など絶対にしないほうがいいのは当たり前なのですが、国同士の外交交渉でどうしても折り合い点を見出せない場合、致し方なく戦争という手段をとるというのは、18世紀から20世紀中盤までは、ありえたことです。(現代では核保有国同士の戦争は世界の破滅に直結しており、かつてあった戦争はもう存在しません)なのに日本の開戦自体をまるで究極の悪のように仕立てあげた東京裁判。
まるで開戦したことそのものが戦争犯罪のような論理。開戦したことが犯罪ならば、開戦に至らざるをえない石油を始めとする必須資源の禁輸を徹底したアメリカのルーズベルト大統領、日本が戦争回避のために妥協に妥協を重ねたにもかかわらず、それ以上の過酷な条件(この条件、いわゆるハル・ノートの内容は我々国民はもう少し知っておくべきだと思います。いくらなんでも・・・という驚愕の内容です)を突きつけてきた、国務長官ハルなども当然犯罪者候補ですが、敗戦国である日本にだけその責任を負わせて、A級だのB級だの押しつけてくる論理。そして悲しいかな、我々日本人自体が、そのアメリカ側の論理をすっかり受け入れてしまっているという戦後日本人の精神状態に想いを馳せました。(ちなみに、さきの大戦における最大の戦争犯罪が存在するとしたら、言うまでもないかもしれませんが、『戦争においては、決して戦闘員でない民間人を巻き込まない』という国際法を踏みにじって、無辜の数十万市民を死に追いやった原爆投下および東京、名古屋を始めとした主要都市への大空襲ではないでしょうか)
本作で少しだけ痛快だったのは、劇中の中村雅俊演ずる近衛文麿の弁。あの時代、欧米列強が圧倒的武力を背景に元々19世紀末から始めて、その結果、アジアを蹂躙していた植民地主義。そのなかで、日本は明治以降植民地にされぬよう、欧米に対抗し、拮抗すべく、奮戦していたこと自体が悪なのか?というセリフ。実際の近衛はこれほどのセリフを吐ける人物であったようには思えない(もしこんな抗弁がしっかりできる人物なら東京裁判召喚前夜の服毒自殺などという手段はとらなかったと思います)のですが、すこしだけ溜飲をさげました。
この映画はいいも悪いもなく、そうした敗戦直後の日本の状況(たった数人の外国人によって、1000年以上も永く続いた国の伝統や体制さえ変えられる可能性があったという切ない状況)が事実として存在したことをフィルムに映し出しており、そうした記録的映画として、もう少しさきの未来にこそ今よりも価値をもつのではないかな・・・そんな風に感じさせてくれる映画でした。
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シネ丸 (木曜日, 22 8月 2013 17:45)
「天皇陛下とマッカーサーの写真」その圧倒的な事実を前にして、フィクションでアメリカ兵と日本人女性のロマンスって絶対違和感ありありですよね。 キャスティングプロデューサーの奈良橋陽子さん(学校の同僚先生で出演)が「初音映莉子をどうしても使いたかった。」とインタヴューでおっしゃってました。 どうなんですかね菊池凛子よりはましでしたけどね!
(それにしても先生のブログは素晴らしいのに、シネ丸は女性週刊誌記者み
たいでスイマセン)
fourseasons-clinic (水曜日, 28 8月 2013 22:51)
初音映莉子さんは、「ノルウェイの森」でのミドリ役が印象的でした。正直、菊池さん演ずる直子よりははまってました。
確かに今作はプロデューサーが日本人ということで、ハリウッド映画にもかかわらず、完全なアメリカ寄りの切り取り方ではなかったし、映像としてもなんだか透明感のある作品でしたね。
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