ベルナルド・ベルトルッチのほぼ10年ぶりの新作をサロンシネマ2にて鑑賞してきました。かつては「ラスト・エンペラー」「シェルタリング・スカイ」などの大作を作った監督。
タイトルからして、おそらくトリュフォー的な青春符ものかなと想像しつつの鑑賞でしたが、ほぼ予想は当たり。監督のキャリアの初期に撮ったと言われても納得いくような、いい意味で初心に戻った作風。こういうのって、個人的には常に憧れます。
自己愛が強く、周囲と協調できず、好きな本と音楽を携え、学校のスキー合宿に行くと見せかけて、自宅アパルトメントの地下室にひきこもる少年ロレンツォ。しかし一週間の計画に予想外のほころび。遠くに暮らしているはずの姉オリヴィア(ただし異母姉)の来訪(襲撃というべきかも)。その姉(結局、地下室での一週間で薬物中毒からの困難な離脱を達成)を通して、大人の社会の不可解さ、複雑さ、難渋さを感じつつ、少年から脱皮・成長しつつ、大人への入口に立ち、外の世界で生きていこうと決意していく彼。外の世界に出たと同時に、路上でなんとなく別れていく姉弟。少年の成長とともに、姉の今後の苦難も予感させながら、エンドロールへ。あとは観るものの想像力にお任せしますという、50~60年代フランス映画ばりの余韻。
いや~素晴らしい!こういうのって文句なく好きです。かつては詩人でもあったベルトルッチ監督の詩心がすみずみに瑞々しく息づいていて、思わず自分にもこんな微妙で不安定な時期があったよな~と感慨。
日頃の診察で、さまざまな子供たちの相談を受けることも多いのですが、思春期には、みなさまざまな内面や要因を抱えていて、それが公式のように一筋縄ではいかず、それぞれのケースにそれぞれの答えや適切な対応があります。子供たちは色とりどりの宝石のようなもので、かつて自分もそんな心性を持っていたのだとしみじみ思い出しました。
ラストに少しピリリと辛い山椒のような隠し味が・・・。
(ここからは完全なるネタバレなので、観られる予定の方は読まないことをおすすめします)
タバコの箱(ヘロイン入り)をそれと気づかず、オリヴィア(その箱を置いていくことで離脱を達成するはずだったのに)に渡すロレンツォとなにげに受け取るオリヴィア。
悪意のない無邪気さ。
この姉弟のこれからの苦難に思いを馳せながら帰路に。
それにしても、東広島は若い家族が多く、市内に広島大学(わたしの母校でもあります)をはじめ、広島国際大学、近畿大学といった、規模の大きな大学を複数有し、たくさんの若者を抱える街です。そんな東広島の映画館T-joyでこんな青春映画が普通に上映されるようになれば、東広島もそのときは街としてずいぶん成長し、成熟を見せているのだろうなと街の成長を願いながらの帰宅でした。
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